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あの『Jupiter』でデビューしてちょうど10年。記念すべき年に発表された平原綾香のニュー・アルバム『What I am』には、新しい空気を胸いっぱいに吸い込んだような新鮮さと、これまで以上に力強い足取りで未来へ進もうとする彼女の姿がある。これが今の私、ありのままの自分だという思いの込められた本作の完成までには、どんな道のりがあったのだろう──。

──今回の制作はいかがでしたか?

「ツアーをやりながらレコーディングをしていたので結構ハードだったんですけど、すごくリアルなアルバムができた気がしますね。ツアーをやっていた、その同時進行の感触があるというか。こういうやり方はほぼ初めてに近いんですよ。以前はツアー中にシングル1枚出すだけでも大変でヒーヒー言ってたぐらいなので課題は大きかったのですが(笑)、こうして無事完成して本当に良かったです」

──今年(2013年、以下同)の12月17日でちょうどデビュー10周年を迎えられるわけですが、そういった気持ちもありました?



「もちろん10周年というのはありますけど、やっぱり今年は、自分にとってレコード会社を移籍したというのが大きかったんですよね。改めて、未来に向けてみんなで動き出した感じがあるんです。もうすぐ今までやったことがなかった、FacebookやTwitterなんかも始めるんですよ(※取材時)。今回の収録曲に『Tweet your love』という曲もあるので、Twitterをやっていないと説得力がないじゃないですか(笑)」

──いやいや、単純に楽しみにしていますよ。どんなことを発信されるのか(笑)。でもそういった試みも含め、確かに今作からはとても新しい空気感を感じます。

「自分の檻というか、自分で作っていた自分のイメージの柵みたいなものをどんどん取っ払っていけたような気はしています。今年のツアーで、みんなはバラードを聴きたいと思っているんじゃないかなっていうのをすごく感じたんですよ。“THE平原綾香!”というショーをあのツアーでお届けした時のみんなの反応がすごく良かったから。もちろんそういうイメージの自分もすごく好きだけど、アップテンポの曲でもみんなのノリはいいわけで、言葉はアレですけど、“どれでもいいんだ! 大丈夫なんだ!”って思えたんですよね。この10年かけて、やっとそう思えるようになったというか」



──なるほど。

「それこそデビュー当時は、“平原さんと言えばクラシックですよね”って。今でもまだ言われることだけど、“…アップテンポな曲も歌うのに”って抵抗している自分もいるんですね。だからそういう曲も頑張って歌おうとしていたけど、なかなかみんなに受け入れてもらえていないんじゃないかと思ったりもしてた。すごく葛藤があったんです。でも10年経ってそういうのもなくなって、今回はツアー中だったというのもありましたけど、このアルバムでは本当に色んなことがやれたんです。バラードも歌いたいし、アップテンポも歌いたいし、すごく壮大なストリングスのものも歌いたい──。未来の自分に向けて、思いきり好きなことができたような気がしています」

──今回はほとんどの詞をご自身で書かれていますね。

「今回は、今までよりも言葉に対して迷いがなかったんです。これまでは歌詞を書くってすごくツラい作業だったけど、今回はそうじゃなかった。こんなに素直に書けたのは初めてでしたね。何でだろう(笑)?」



──これまでがそうじゃなかったという意味ではありませんが、今回は、愛の歌はよりダイレクトに愛を言葉にしていたり、未来や希望を歌ったものはしっかりとコブシが握られているようなイメージで、言葉の輪郭や色彩がとてもハッキリしている気がしました。

「あぁ、それは嬉しいです。最近、自分で何をやりたいとかこれはイヤだとか、言えるようになってきたんです。幼い頃って、“これは好き、これはイヤ”って生きてきたけど、デビューしてからは“これってわがままになっちゃうかな?”って気を遣いすぎて空回りしていた時期があったんですね。でもこの10年目にして、そういう子どもの頃のような自分も引き連れて大人になっていきたいっていう一歩を踏み出している感じがあるんです。私自身が迷っていたら、周りのスタッフも迷いますよね。もし私が平原綾香という名の船の船長だとしたら、“どこに行っていいか分かんなーい”なんて言ってたら“どっちやねん!”ってなっちゃうでしょう(笑)? “そっちは嵐だ!”って言われても“いや、私はこっちに行くんです!”と言うし、回避するためにみんなで動く。そういうことが少しずつですけど、できてきてる気はしているんですよね。性格が変わったというわけではなく、そういう自分が出てきたのかな。男っぽい自分といったらヘンだけど」

※続きは月刊Songs1月号をご覧ください。

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