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“いつもASSE!!(※驚きを意味する沖縄方言)と驚く音楽を届けたい”との思いを込めたプライベート・レーベルを立ち上げたHY。心に届く手作りの音楽を目指して新たな旅立ちをした彼らの第一歩となるアルバム『GLOCAL』がリリースされる。これまでもHYは“HeartY活動”などで地元を大切にしながら、海外ツアーも行なってきた。地域に根付いて、世界に羽ばたいていく彼らの活動を集約した言葉=“GLOCAL”を核に進化を続けるHYの今を刻んだアルバムとなった。この新作について、さらに全国ツアーや“SKYFes”についても聞いた。
Photo:駒井夕香 Text:伊藤博伸

──プライベート・レーベル“ASSE!! Records”からの初のアルバム『GLOCAL』がリリースされる今の気持ちから聞かせてください。



新里英之(以下、新里)「去年レーベルを立ち上げてからは、期待と不安の中で自分と向き合い、HYと向き合いながら考える時間がすごく多かったんですね。色んな葛藤もあったけれど、それを乗り越えなきゃいけない、という気持ちがいつも先にはあって。そこに行くためにはどうしていこうか、という思いの中で作り上げていった曲もたくさんありました。9枚目(のアルバム)ですけど、自分にとってはHYの新たな始まりの1stアルバムのような感じがしています。『Departu re』(1stアルバム/2001年9月)の頃のワクワクさも持ちながら、これから5人でやっていくんだ! という決意も『GLOCAL』には込められたと思います」



名嘉 俊(以下、名嘉)「自分達のレーベルからの新しい出発の1枚目だし、HYにとってターニング・ポイントになるアルバムだから力が入るかなと思っていたら、リラックスした自分達が追い求めていたレコーディングになりましたね。肩の力を抜いて音楽してるなっていう」



許田信介(以下、許田)「全曲沖縄でレコーディングできたのが良かったと思いますね。『Route29』(8thアルバム/2012年12月)は3曲だけ沖縄で録ったんですけど、全曲は10年振りでしたから」

名嘉「東京だとやっぱり緊張がハンパないんですよ、上等な設備に囲まれてレコーディングするっていうのは。仕上がってしばらくしてからライブの前に聴き直すと、自分的にはもう少しできたんだけど…みたいなところが毎回あってね。今回は沖縄でメンバーとワイワイしながらゆっくりやれたから。それは東京で10年レコーディングしてきたからこそ得られた空間なのかなと」

──曲作りは順調でしたか?

新里「新しい一歩を踏み出すって、すごい勇気が必要じゃないですか。これから先、自分達で10年20年とHYを続けていくためには、今までのように敷かれたレールの上を走っていくんじゃなくて、自分達でレールまでも敷いて進んでいこうって、みんなで決めたんですね。自分達でレールを敷くことで、その大変さも分かるし、自分達1人1人が社会人としての責任や自覚を今まで以上に強く持てるんじゃないかと思って新しい一歩を踏み出していったんですけど、やっぱり最初は不安すぎて曲を作るどころじゃなかったです」

──他のメンバーの方はどうでした?

新里「みんなそれぞれ不安のレベルは同じだと思うんですよ。だけど俊は、チョー楽しい! これからやってやるぞ! っていう雰囲気を出していてね。前向きだな、自分も頑張らなきゃいけないなって、逆に勇気をもらった。みんなの行動を見ていたら、自然とギターを持って曲が出てくるまで何回も弾いて、歌っていた。そのうちに、この悩んでいることを書けばいいんじゃないかと気付いて。その瞬間、心の中にたまっていたモヤモヤが一気に出て、前向きなプラスの思いが溢れてきましたね」

──その時に生まれたのが『オーレ』や『エール』?

新里「そうです。全部悩みが出て歌詞を書き始めた瞬間、いつも支えてくれたファンのみんなのことが浮かんできて、『オーレ』の“僕の仲間に会いに行くさ”というフレーズが出てきたんです」



仲宗根 泉(以下、仲宗根)「自分も俊と同じで、ハッピーな考えしかなかったですね。HYをどんな方向性にも自分達が好きなようにやれるんだ! と思ったら、嬉しさと楽しさしかなかった。今回沖縄で合宿をやると決まった時も、すごい楽しみでした。いつもは県外だったし、なかなか合宿中に曲が書けなくて焦りの中で何かテーマを探して、書きに走っている部分があったけど、今回は合宿に入ったらものすごい勢いで曲が生まれてきてね。2〜3曲一緒に出てきて、曲を書くのが興奮して止まらないというか。楽しすぎて寝る間を惜しんで曲作りをしていましたね、高校生の頃みたいに」

名嘉「夜中にいきなり歌ったりもしてたよね」

仲宗根「うるさいかなとも思ったんだけど、もう止まらなくて。明日にしようとやめたら書けなくなると思ったら、今しかないと思って。合宿所が崖の上にあったので、海の見えるところにキーボードを持っていって何げなく海を眺めていたら、メロディーと歌詞が一気に降りてくることもありました。高校生時代の自分達のスタイルはこんなだったのかしら、というところに帰れた気がします」

──求められるHYらしさへの戸惑いは払拭できたようですね?

仲宗根「以前は、見えないHYというものにとらわれていたこともありました。環境問題とか自分達も視野を広げていくような歌や、命に対する歌を書いているうちに、ラブソングというよりももっと大きな愛になって、どんどん身近な愛の歌が書けなくなっている自分がいて。だから自分達でやろうと決めてからの合宿で、自由な発想の歌がどんどん生まれてくることが楽しかったし、嬉しかったんですよね」

新里「確かに、HYらしさって何だろう? って考えてみたこともありました。でも今は、自分達の音楽はHYにしか出せない音なんだって自覚して、自信を持ってやれている。そういう気持ちのほうが大きいですね」

──サンバのリズムの『エール』とか、新しい挑戦もされていますね。宮里さんの『無理な願い』のようなスライドギターを入れたカントリーポップな曲もあったり。



宮里悠平(以下、宮里)「ブルースも好きだし、こういうのを作ってみたいなという気持ちは前からあって。ただ、なかなかこういう雰囲気の曲に合う歌詞ができなかったんですよ。だけど今回詞を乗せてみたら、意外と合うかなと思ったのでやってみました。この曲ができたことで、次はもっと違ったものに挑戦していきたいなと思いましたね。ボトルネックは楽しかったです」

──仲宗根さんの『言いわけ男と愛して女』のオケは打ち込みですね。以前『Cheaters』(5th アルバム『HeartY』収録/2008年4月)でも打ち込みで制作していましたけど、今回はどうでしたか?

仲宗根「『Cheaters』の時は、あの時に自分達がやれることをやったんだけど、私的にはもっと打ち込みのサウンドが良かったのね。ただ自分の思いとは裏腹に、HYはバンドだから打ち込みだけの音にしちゃいけないという意見があって。今回は“こういう曲をやるんだけど、みんなの音が聴こえなくてもいいよね!?”って聞きました(笑)。そうしたら、メンバーも“いいよ!”って言ってくれたから。それで成り立っている曲ですね」

──『恋の花びら』でも斬新な挑戦をされているとか?

※続きは月刊Songs3月号をご覧ください。

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