http://www.ishizakihuwie.com/
昨年7月にリリースした、1stフル・アルバム『独立前夜』が音楽専門誌などで高い評価を獲得。奔放なクリエイティビティーに支えられた音楽性と、エモーショナルなライブパフォーマンスによって急激に注目を集めているシンガーソングライター・石崎ひゅーいから、2枚目のミニ・アルバム『だからカーネーションは好きじゃない』が届けられた。彼の創造性の源とも言える“亡き母”をテーマにした本作は、刺激的なロックサウンドと普遍性を備えた歌が1つになった作品に仕上がっている。
Photo:秋倉康介 Text:森 朋之

──1stフル・アルバム『独立前夜』以降、“次はこういうことをやりたい”というイメージはあったんですか?

「なかったですね(笑)。ただ、曲ができなくなっちゃったんですよ。今までは曲の作り方が衝動的というか、自然に生まれてきた時に作るっていう感じだったんですね。1stフル・アルバムのあとも“いつかできるだろう”と思っていたんだけど、全然できなくて…」

──焦りますよね。



「いや、焦らなかったんですよ。別にいいやと思ってお酒とか飲んでたんですけど、僕は良くても周りの人は良くないですからね。新しいCDを出せなくなっちゃうから(笑)。その時にスタッフの人達が“何かテーマを掲げて作ってみたら”って言ってくれたんですよ。“確かに!”と思って作り始めたのが、今回のミニ・アルバムなんです」

──“亡き母”をテーマにすることはすぐに決まったんですか?

「曲ができないと言いつつも、ちょっとしたフレーズというか、カスみたいなものは結構あったんですけど、母へ向けてのものが多かったんです。“自分はそっちの方向に心が向いているんだな”という感じもあったし、前のインタビューでも話したと思うんですけど、僕はものすごく母親の影響を受けているんですよ。すごいマザコンだし、母親の存在が自分の歌の根源になってることも意識していて。“このタイミングでそこから抜け出して、違うところに行くのか”ということも考えたんですけど、その前にもう1回、原点に戻ってみようと思ったんですよね。気持ちの悪いマザコン・アルバムをしつこく作ってみようかなって(笑)」

──全然気持ち悪くないですよ(笑)。お母さんから受けた影響って、具体的にはどういうものなんですか?

「ものの考え方もそうだし、“メシがすごく美味い”ってこととか。あとね、不思議な引力を持ってる人だったんですよ。僕の友達がわざわざ母に会うためにウチに来たり、裏庭に隕石が落ちたり、野良猫や野良犬が来たり、とにかくすごいパワーがあって。『だからカーネーションは好きじゃない』っていうタイトルも、実際の出来事が元になっているんです。小学校3年生の時に、自分でカーネーションを買って母ちゃんに渡したんですけど、“こんなダサい花、私にくれるんじゃない!”って言われて。その時はショックだったんですよ。“せっかく買ってきたのに!”って。でも、あとになって分かったことがあって。小さい頃から“誰に何を言われても、しっかり自分の考えを持って生きていきなさい”という育て方だったんですけど、(カーネーションのエピソードは)その代表的な例だなって」

──“母の日=カーネーション”ではなくて、自分の感性でプレゼントを選びなさいっていう。

「あとは単に“こんなダサい花はイヤだ”っていう(笑)。好き嫌いがハッキリしていましたからね」

──母親をテーマにした曲作りって、どういう感覚なんですか?


 
「楽しいし、言葉が出てきやすいんですよね。母ちゃんが気に入ってくれそうなものをかき集めるわけだから。ただ、このアルバムを聴いた時に思ったのは、“発売しなくてもいいかな”ってことだったんです」

──ええっ!?

「CDを持って富士山に登って、頂上で天に向かって投げるんですよ。そしたら、どこからともなくデカい鳥が現れて、CDをくわえて天に召されていく…みたいなのがいいかなって。それをマネージャーに話したら、“ふざけんじゃない!”って言われましたけど(笑)」

──それくらいプライベートな思いが込められた作品だってことですよね。じゃあ、サウンドについては特に意識したことはなかった?

「いや、考えてたんですよ。普段はそんなこと考えないんですけどね。1曲目から4曲目まではエッジの効いたものをドバーッとやって、最後の『卵焼き』でズドーンと落ちるっていう。それを(サウンド・プロデューサーの)Tomi Yoさんと話してから作り始めました」

──『卵焼き』が重要だった?

※続きは月刊Songs5月号をご覧ください。

Close