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アコースティック・ギターは、秦 基博というアーティストを形成する上で欠くことのできない重要なパートナーだ。アコギと共に呼吸し、彼にしか出せない音を表現する。その相思相愛ぶりは年月を重ねるごとに一層高まっていくように感じるのだが、そのことを秦に言うと、「本当ですか!? だったらもっとギターと仲良くなっていかないといけないですね」と照れ笑いした。今回リリースする初の弾き語りベスト・アルバム『evergreen』は、まさしくそんな秦の歌声とアコギとの心地良い関係性を鮮やかに映し出した作品となっている。
Photo:駒井夕香 Text:大畑幸子

──2年振りに行なった「HATA MOTOHIRO presents an acoustic live “GREEN MIND 2014”」(以下、GREEN MIND)が、弾き語りベスト・アルバム『evergreen』を発表するキッカケになったとうかがいましたが、そこで改めて弾き語りという表現が、秦 基博の音楽の根幹をなすものだということに気付かれたそうですね。



「弾き語りというものは自分の表現の中で切り離せないものですし、言ってみたら、音楽を始めた時から僕はずっと弾き語りという形で曲を書いているし、そういう意味では自分にとって全ての始まりにあるものなんです。だけど、それは自分1人でアコギ1本だけで歌うから、ということではなくて。アコギ1本で曲のドラマをどうやって構築するかとか、どういう弾き方がふさわしいのかとか、弾き語りをする上でどういうアレンジがいいのかっていうような、そういった弾き語りを僕は“GREEN MIND”というライブを通してずっと追求してきたんですよね。それを今年久々にやった“GREEN MIND”で改めて実感できました。そこで思ったんですよね、デビュー丸8年経って、これから10周年というひと区切りに向けて、自分の表現の中でも重要な核となる弾き語りを1つの形としてまとめてみるのも良い時期なのかなと。でも、最初はアルバムにどうまとめようかとすごく悩みました。というのは、2008年以降“GREEN MIND”と銘打った何十本ものライブを通して、膨大な数の弾き語りのアレンジ・バリエーションがあるし、弾き語りだけじゃなくて、小編成のアコースティックって枠で構成することも考えたりしたので。結果、ここは思い切ってシングル曲や代表曲でまとめてみてはどうだろうかと思ったんですけどね。そのほうがコンセプトとしても伝わりやすいし、その時々の自分の表現したいことや気持ちが色濃く出ているものが並ぶことになるし。そしてそれらを弾き語りで聴いてもらうことが、一番自分らしい表現なんじゃないかなと思えたんです」



──ライブ・テイクと新録音源とが絶妙に混在していますが、どのようにセレクトしたんですか?

「まずライブ・テイクは2009年以降のものが多く選ばれました。僕の弾き語りに対する考え方が変わったのは、サポートメンバーを入れずに初めて1人で全部弾き語った2009年の“GREEN MIND”ツアーからなんですよね。21本あったそのツアーを通して、弾き語りに対して自分の意識が明らかに変わっていき、その後ある意味1つの到達点と思える、全編1人でやり切った2011年の日本武道館公演までの道筋が今も軸になっている気がします。2010年以降は明らかにギターの弾き方とか、弾き語りの捉え方が違いますから。まず今年のライブまでの音源を実際に聴き返してみて、その時々のみずみずしさとか、グルーヴの気持ち良さを強く感じられるテイクからセレクトして、その結果、スタジオ録音でもライブ録音でもベストなテイクを素材として、それらをどうミックスするか次第で、統一感のある作品に仕上げることができると考えたんです」

──そういった中で弾き語りのアレンジをすごく意識した曲って言うと?



「『フォーエバーソング』ですね。この曲はバンドで言うと8ビートのバッキングがイントロからジャカジャン! って入っていくじゃないですか。だけど、それをギター1本だけでやる場合はどうするか…ワンコーラスひたすら刻み続けることが、1曲の中のドラマを2番以降で爆発させるための布石になるわけだから、それを1番でどこまで我慢できるかとか。そういうことが分かりやすく出ていると思いますね。あと『エンドロール』もループと一緒にやっているテイクが収録されているんですが、この曲ってどこでバッキングに変わるかっていうポイントがいくつかある楽曲なんですよ。1番のサビでいくか、2番のサビでいくか。この選んだテイクのすごくいいところは、それを間奏まで待っているんですよね。サビいっぱいまでアルペジオで我慢している。そうすることによってラストのサビへの急激な盛り上がりが出るので、カタルシスが全然違うんですよ」

※続きは月刊Songs11月号をご覧ください。

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