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KOKIAのニュー・アルバム『I Found You』は、彼女が出会ってきた人や物、言葉などが大きな力となって生まれた作品だ。これまではとても大きな愛を歌うことが多かった彼女が、今作ではストレートにラブソングを歌い、ここ数年で経験してきた、たくさんの出来事がとても素直な言葉で表現されている。自身でアレンジに挑戦した楽曲もあり、音作りの面からも、改めて作る喜びを実感したという本作。聴けばきっと、体の内側から湧き上がるものを感じるようなアルバムだ。
Photo:秋倉康介 Text:山田邦子

──『I Found You』、本当に素敵なアルバムです。全てを更新してしまうような、生命力やエネルギーに満ちていましたね。



「ありがとうございます。私も毎回、新記録を更新するみたいな気持ちで作っているし、“いいアルバムができました!”ってその度に言ってきたんですけど、今回は特に記録更新したなと思いました。長くやっていると、私生活においてもミュージシャンとしても色んなことが起こるじゃないですか。結局は時間をかけて色んな経験をすることで、シンガーソングライターって深みを増していくんだろうなって思いましたね。以前は、書きたくてもちょっと未熟ゆえに手が出せなかったお題とか、自分の中に体験としてなかったものとか、何となく書きたくても書けないものがちょこちょこあったんですけど、今回は“今なら書ける!”と思える瞬間や、引き出しが増えていく感じがすごくあったんですよ。生みの苦しみは毎回ありますが、新しい発見がすごくあってとても楽しいアルバム制作でした」

──今回は、ロンドンでの経験や刺激も大きかったそうですね。

「2年ぐらい前からロンドンに行き始めたんですけど、その頃は色んなことに疲れていたというか、ちょっと自分探しみたいな気持ちでロンドンに行ったところがあったんです。人に伝えるとか曲を書くことって、すごくエネルギーがいることなんですよね。自分がある程度元気じゃないと出てこないというか、発信できない。そんな時にロンドンで色んな出会いがあったり刺激があったりして、やっと“来たかも!?”“今ならまた音楽を紡ぎ出せるかも”っていう気持ちとエネルギーがムクムクと湧いてきたんです。それが去年の夏くらいでしたね」

──ロンドンでは中古のキーボードを買って制作を始めたとか。



「はい。ロンドンには単身で渡って、10代とか20代の人達と一緒に、寮で寝起きしながら英語の勉強をしてたんですね(笑)。眠る部屋でさえもシェアしていたから、音とか寮にいた時はあまり出せなかったんですけど、アルバムの制作を始める頃にはロンドンでの生活も長くなってきていたので、アパートに移って、キーボードを買って、曲作りを始めたんです。日本だと防音室があるので、昼夜関係なく仕事ができたり、機材なんかの環境が整っているんだけど、向こうでは、楽器を中古で買って帰って、自分でセッティングをして、隣近所への音の気を遣いながら曲を作るんですよ(笑)。何だか遠い昔に戻ったようで、不自由さをとても生き生きと感じられるというか、とにかくすごく楽しかったんです」

※続きは月刊Songs2015年4月号をご覧ください。

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