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藤巻亮太は新作『旅立ちの日』によって、ソロのシンガーソングライターとしてのスタイルをしっかりと掴み取ってみせた。抒情性とダイナミズムを共存させたメロディー、何げない日常の中にある“本当に大事なこと”を描いた歌詞、そして、楽曲の世界観を増幅させるようなボーカルが1つになった本作は、彼の新たな代表作となるだろう。特に現在の藤巻自身の心境がリアルに反映されたタイトル曲『旅立ちの日』は名曲!
Photo:秋倉康介 Text:森 朋之

──ミニ・アルバム『旅立ちの日』、いい曲が揃っていますね。



「お、ありがとうございます。やっと揃ってきたというか、自分でも“曲は作ってたんだな”って感じですね」

──ソロ活動をスタートさせてから、3年くらい経ってますからね。どんなテーマで制作されたんですか?

「去年リリースしたレコード会社移籍第1弾(3rdシングル『ing』/2014年12月)の時は、自分の中の思いを整理したいというのがあって。それはミュージシャンとして通らなくちゃいけない道だったと思うんですけど、あのシングルを経て、もっと色々なこと──音楽の土壌を豊かにしていくような──メッセージを6曲の中で伝えられたらなって。曲は結構あったんですよ。『アメンボ』(映画『太陽の坐る場所』主題歌。『ing』収録)があって、『ing』があって、その間にも弾き語りのライブで新曲を演奏していたので。その中で少しずつバージョンアップしていった感じなのかな。あとね、周りのスタッフの空気を含めて、“今”をちゃんと歌った曲を表題曲(『旅立ちの日』)にしたかったんですよ。ソロとしてデビューして3年経ったのに『旅立ちの日』っていうのもどうなんだろう? って自分でも思うんだけど(笑)」

──でも、藤巻さんにとってはまさに現在が“旅立ちの日”なんですよね?

「そうですね。もともと自分のソロ活動って、全てのことが分かって、バランスも取れた状態で始まったわけではないんですよ。衝動に身を任せるように始まったというか、レミオロメンでは表現できないような個人的な曲ができてきて、“これを歌いたい”と思ったことがキッカケだったので。その後も心と身体が追いかけっこしているような状態が続いていたんだけど、3年目でやっとそのバランスが取れてきたんですよね。そこで感じたリアリティーをちゃんと形にしたいっていうのが、この曲を書いた動機でもあるので」

──じっくり時間をかけて、自分自身の音楽を確かめようとしていたのでは?

「意図的に時間をかけたわけではないですけどね。石の上にも3年っていう言葉があるくらいなので、“これくらいの時間がかかるんだな”っていう感じなのかな。何ていうか、生きること、人生そのものを旅に例えると、新しいものに出会っていくのも素敵だけど、自分にとっての根本の部分──“魂のふるさと”ですよね──にもう1回出会うのも大事だと思うんです。“これがあったから、今の自分が存在している”というか。それが見えてきたんですよね、3年目くらいで」

──『旅立ちの日』には、“君と過ごした時間が/僕の魂のふるさと”というフレーズもありますね。

「自分が情熱を傾けてきたもの、仲間と過ごしてきた時間。そういう全てのものが、今の自分を作っているんだなって。自分の人生は1回しか経験できなくて、これまでの過去にも無限の選択肢があったはずなんです。その中で何を選んできたかによって、今があるというか。本で読んだんですけど、仏教の中に“自分が選んできたものが実は最善なんだ”という考え方があるらしいんですね。それって素晴らしいことだし、ものすごくポジティブじゃないですか。それは自分が『旅立ちの日』で書きたいと思っていたことにも近いんですよ」

※続きは月刊Songs6月号をご覧ください。

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