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日本を代表する若きヴァイオリニストとして活躍中の宮本笑里。クラシックに限らず、J-POPのシーンでも数多くのアーティストとコラボレーションをしながら、そのみずみずしい感性と才能で人々を魅了し続けているアーティストだ。そんな彼女が、結婚、そして出産を経て、約3年半振りとなるニュー・アルバム『birth』をリリースする。自分自身の変化や新作に込めた思いなどをじっくり聞いた。
Photo:竹中圭樹(D-CORD) Text:山田邦子

──オリジナル・アルバムとしては久し振りのリリースですね。



「そうなんです。ベスト・アルバムのリリースなどはありましたが、新しい曲をレコーディングしたのは本当に久し振りだったので、色んな思い出も詰まった1枚になりました」

──前作から3年半振りという、このタイミングは?

「妊娠から出産を経て、育児が中心の生活になっていたのが大きいですね。ちょっと体調も崩していたので、かなり長い間ヴァイオリンの練習もできないような状態だったんです。ヴァイオリンを弾きたくてたまらないという気持ちと、音楽に触れていたいという思いがさらに高まって、この今の自分の気持ちを全部音色に込めて表現したい! と思い、そろそろアルバムを出そうかということになったんです」

──ウズウズしてきたんですね(笑)。

「してましたね(笑)。毎日、最低でも3〜4時間は当たり前のように集中して練習していて、お休みの日は、ご飯を食べる以外はほぼ練習しているような生活だったんです。でも子どもがいると、子どもと向き合う時間が増えますから、練習も5分、10分やって遊んで、練習して遊んでっていう生活が最近はずっと続いていて。長時間練習する時間はなくなってしまったけど、逆に今はその短時間で練習できる喜びというか、楽器が弾けるだけで本当に幸せなことだなと思えるようになったんです」

──また新たな気持ちで音楽と向き合えるようになったと。

「はい。それで、新しい宮本笑里をいかに表現できるかっていうのを今回は課題にしたんです。曲目も、これまでレコーディングするにはちょっと勇気が出なかったものにも挑戦しました。精神的に、ちょっと強くなれたところがあるのかなと思えたんですよ。あと、音色もちょっと変わってきたなぁと思って」

──というと?

「以前に比べたら太くなったのかなぁ、と。ヴァイオリンって、同じ楽器でも弾く人によって音色が全然変わるんですね。楽器ひとつひとつにもキャラクターがあるんですけど、アゴで挟むので、その人の骨の響きが体全身から伝わって音色になるんですね。たぶんですけど、毎日子どもを抱っこしてることで程良い筋肉が付いてきて、それがパワーアップになったのかなぁって(笑)」

──精神的にも肉体的にも、変化したものが反映しているんですね。

「だと思います。これまでにも、その時の精神状態によって音色とか曲の解釈が変わるなというのは感じていたんですけど、今回はそれが明らかに大きく変わったなと。今回の制作中もですが、その前に何度かやってきたコンサートでも、その変化は実感してきましたね」

──アルバム・タイトルにもなっている『birth』という言葉には、そのあたりのお気持ちも込められているんでしょうね。

「そうですね。今回私が作曲した『birth』という曲が1曲目に収録されているのですが、この曲は娘が生まれてから作ったものなんですね。子どものことや新たな誕生という意味も込めて、何か新しいメロディーを生み出したいという気持ちで作ったんです。あとは、ずっと待ってくださっている皆さん、応援して支えてくださっている皆さんへの感謝の気持ちを込められたらいいなと思ったところから、まずこの『birth』という曲を作ったんです」

※続きは月刊Songs10月号をご覧ください。

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