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デビュー10周年を迎えたMay J.が『Summer Ballad Covers』(2013年6月)、『Heartful Song Covers』(2014年3月)に続くカバー・アルバム・シリーズ第3弾『Sweet Song Covers』をリリースする。今回は『RIDE ON TIME』(山下達郎/1980年)、『SWEET MEMORIES』(松田聖子/1983年)など、1980年代のJ-POPを中心にセレクト。生楽器を中心としたサウンドと共に、より深みのあるボーカルを堪能できる作品に仕上がっている。
Photo:藤里一郎 Text:森 朋之

──3作目のカバー・アルバム『Sweet Song Covers』がリリースされます。今回は1980年代前後のJ-POPが中心ですね。

「そうなんですよ。実は知らなかった曲も多かったんです。半分くらいは聴いたことがあったんですが、あとの半分は初めて聴いた曲で。私の周りには40代のスタッフが多いので、まず、みんなで1980年近辺の曲を何百曲と選びました。その中から40曲くらいを覚えて、今回もカラオケに行ったんです」

──恒例のカラオケ・ミーティングですね。

「はい(笑)。1番まで覚えて、実際に歌いながら“この曲はグッときた”“これはちょっとキーを上げて”ということを話し合って。やっぱり、自分で歌ってみないと分からないですからね。そこで“私が歌ったら、どういうふうに聴こえるか?”というのを確かめながら、13曲に絞ったんです。選ぶのは難しかったですね。本当に良い曲ばかりだったし、個人的に“どうしても歌いたい”と思う曲もあって。例えば『あなた』(小坂明子/1973年)は歌詞がすごくカワイくて、ぜひ歌いたいな、歌詞の重い部分を出さないようにカワイらしく歌ってみたいなって」

──May J.さんのスタンスで楽曲を解釈しているわけですね。この時代の楽曲にたっぷり触れてみて、どんな印象を持ちましたか?

「1曲1曲が宝石のように輝いていて、プレシャスだなって思いました。まず歌詞を先に読んだんですけど、それだけで世界観が伝わってくるんです。そのあとに曲を聴くと、まるで映画を見ているような感覚になって、自分が主人公になれるんですよね。歌う時も、そういう雰囲気は大切にしていましたね。あと、“この時代だからこそ、成立したんだろうな”と思える曲もあって。例えば『木綿のハンカチーフ』(太田裕美/1976年)なんて…」

──遠距離恋愛中の男女が手紙でやりとりする、という歌ですよね。

「今はLINEなどで簡単に連絡が取れますからね(笑)。いつもは曲の主人公を自分に置き換えて歌うようにしてるんですけど、それが難しい時は、ストーリーテラーとして歌うことを意識していましたね」

──曲の物語を伝えるということですね。

「曲の背景を知ることも大事だと思います。『秋桜』(山口百恵/1977年)は、テレビ番組に出た時に他の出演者の方が歌っていて“素敵だな”と思っていたんですね。今回じっくりと聴いてみたら、母親への気持ちを歌った曲ということが分かって」

──原曲の世界観を大事にしたアレンジも印象的です。

「今回は全部、生バンドでレコーディングしたんですね。私も一緒に同録(同時録音)することが多かったんですけど、原曲を大切にしながら、May J.の色が出せるように試行錯誤しました。今回、原曲で演奏している方が偶然参加してくださっていたりしました」

──江口信夫さん(ドラム)、山木秀夫さん(ドラム)、松原秀樹さん(ベース)、古川 望さん(ギター)、村田陽一さん(トロンボーン)など、1970年代から日本の音楽を支えているミュージシャンの方々ですよね。

「そうなんです。『異邦人』(久保田早紀/1980年)のベースも原曲と同じ高水健司さんが弾いてくれていて。『RIDE ON TIME』のマスタリング、『秋桜』のレコーディング・エンジニアの方も、原曲と同じなんです。本当に恵まれた環境でしたね」

※続きは月刊Songs2016年4月号をご覧ください。

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