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2000年代の洋楽ギターロックからの影響を独自のセンスで反映させた音楽性で、ロックシーンにおける個性的なポジションを獲得しているWHITE ASHが4thアルバム『SPADE 3』を完成させた。前作『THE DARK BLACK GROOVE』(2015年3月)では深みのあるバンドグルーヴを追求した彼らだが、本作では衝動的なロックンロールへ回帰。この変化についてメンバー4人に語ってもらった。
Photo:竹中圭樹(D-C0RD) Text:森 朋之

──ニュー・アルバム『SPADE 3』は、初期衝動を感じさせるロックチューンが軸になっていますね。

のび太「このアルバムを作るキッカケは、前作『THE DARK BLACK GROOVE』のリリースツアーの追加公演だったんです。初めてワンマンツアーをやった時のライブハウスを回ったんですけど、『THE DARK BLACK GROOVE』の曲自体、大きい会場で演奏することをイメージして作ったものがほとんどだったので、ライブハウスには合わない曲が出てきてしまったんですね。特にアルバムの最後に入っていた『Gifted』は壮大な曲というか、ライブハウスで演奏するにあたって、曲本来の雰囲気や良さが伝わりづらいかもしれないと思い、セットリストから外したんです。その時、ちょっと違和感を感じたんですよね。僕がイメージするロックバンドは、どんなキャパのライブハウスでも、アンプと楽器さえあればカッコいいロックをやれるっていうのが自然な形で。“ライブハウスでやれない曲があるなんて、大事なものを見失いかけてないか?”って思ったんですよね」

山さん「うん」

のび太「『THE DARK BLACK GROOVE』もカッコ良さを追求した作品だったんですけど、それがスマートな方向にいってるのかもしれないと思って。あと、同じタイミングでカート・コバーン(伝説のロックバンド“ニルヴァーナ”のフロントマン)のドキュメンタリー映画『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』を見たことも大きかったですね。カートは全く自分に嘘がなくて、“鳴らさずにはいられない”みたいな感じで衝動的に音楽をやっていて。その姿がすごく突き刺さってきて、“作り込んだ音楽よりも、もっと衝動的にロックをやりたい!”と思ったんですよね。それが今回のアルバムの出発点でした」

山さん「去年はライブをいっぱいやった年でもあったし、そこでお客さんとのやりとりもあって。衝動的にロックをやるというアルバムの方向性も、ライブの中で生まれてきたのかなって思いますね」

彩「前回のアルバムは内に内に向かう感じでしたからね。今回は対極なイメージだし、制作前から“楽しそう”って思ってました」

──ロックバンドとしての根本に立ち返るという意味もあったのかも。

のび太「僕自身が好きなロックって、間口が広くて、分かりやすく“カッコいいな”と思えるものなんですよね。気軽というか、難しいことは置いておいて、バーン! と鳴らした瞬間に“うわ、カッケー!”っていう。そういう感じは今回の作品にも色濃く出てると思います」

──収録曲の中で起点になったものというと?

のび太「『GR101』かな。まさにカートの映画を見たあとに作ったんですけど、最初に山さんが考えてきたギターフレーズが、しっかり構成されていたんですよね。そのアレンジでレコーディングもしてみたんですけど、“ちゃんとしていてダメだ”って思って」

剛「逆にね(笑)」

のび太「そう、もっとラフなフレーズが良かったんですよね。で、山さんに“それはギターが上手い人が弾くフレーズなんだよ”って言ったんです。ギター初心者が30分練習すれば弾けるようなフレーズにしてほしいって。レディオヘッドのトム・ヨークが“ニルヴァーナの『スメルズ・ライク・ティーン・スピリット』のギターリフは30分あれば誰でも弾けるようになるけど、あれはカートしか思い浮かばなかった”って言っていて。それがロックの持っている魔力だと思うんですよね」


※続きは月刊Songs2016年4月号をご覧ください。

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