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森山直太朗がニュー・アルバム『嗚呼』を完成させた。 約半年間の“小休止”を経て制作された本作には、シングル『生きる(って言い切る)』(2015年9月)、表題曲『嗚呼』を始め、『魂、それはあいつからの贈り物』『君のスゴさを君は知らない』など、人間の本質を奥深い響きと共に描き出す楽曲が収録されている。“小休止”の中で得たこと、そして、シンガーソングライターとしての新たな出発となる本作について聞いた。
Photo:竹中圭樹(D-CORD) Text:森 朋之

──“小休止”から戻ってきたと思ったら、いきなりアルバムができ上がっていて。ビックリしました。



「“作っちゃった”っていう感じです(笑)。感慨みたいなものがないですよね、きっと。一度区切りをつけて“ありがとう。さようなら!”って言ったのに、その帰り道でバッタリ会っちゃった感じというか(笑)。こうなると“どうして休むって宣言したの?”と思われるかもしれないけど、結果的には“休んだ理由はちゃんとあったな”って思いますけどね。宣言したからには、戻ってくる時にはそれなりのものを身に付けておかないといけないという気持ちもあったし…。ハードルは少し高くなるけど、黙って休むと自分の性格上、堕落するだけなので」

──“休みの間は山小屋で過ごしていた”というニュースも出ていましたが、1人の時間が増えるのは良いことですよね。活動していると、周りには常に人がいるので。

「周りに人がいるのが当たり前だったから、休んで1人になっても大差ないだろうと思ってたんですけどね。ただ、環境を変えるのはすごく大事だと思ったんですよ。年齢を重ねれば重ねるほど、良くも悪くも習慣が決まってくるんですよね。それを意識的に変えようと思ったら、座っている場所から変えなくちゃいけないというか。あとは部屋の整理をしたり……そんなことばかりやってた気がしますね」

──この先の音楽のことについても考えましたよね?



「YESかNOかって言えば、YESです。それは考えましたね、さすがに。それは音楽そのものよりも、自分の中のモヤモヤとした気持ちのことなんですけどね。そういう曇りがかった感情には向き合ってたかな…。まぁ、“じゃあ、どんな答えが出たんですか?”と聞かれたら、“それが分かるのはこれからでしょう”って感じはありますけど(笑)。ただ、状態としてはスッキリした心地で今回のアルバムの制作に入れましたけどね」

──アルバム『嗚呼』の制作はどんなふうに始まったんですか?



「どこから話せばいいかな…。色んな時系列の曲で構成されているんですけど、まず『嗚呼』という曲は、『生きる(って言い切る)』を歌い切ったあとに御徒町(楽曲の共同制作者、御徒町 凧)と僕が作り始めた曲なんです。言葉を超えた響きなんですよね、『嗚呼』って。要するに全てを含んでるんです。喜怒哀楽、感嘆、絶望、気付き、とか。僕自身もそのことにはすごく共感していたんだけど、どうしても曲にならない時間が続いてしまって。形にしようと思えばできたんだろうけど、自分の中で吹っ切れないものがあったというか。以前だったら周りの空気を読んで──“このくらいの時期に曲ができると嬉しい”ということも言われていたので──その場に合わせていったと思うんですけど、今回はそこに添わないで、自分の中でじっくり待ってから作ったんですよね。能動的に自分が『嗚呼』を作れる、歌う時まで待ったほうがいいなって。“じっくり待つ”っていうのは何かっていうと……たぶん6年とか7年前だと思うんですけど、その頃から“本当はこうしたい。こんなことにチャレンジしたい”という自分がいたんですよね。それができないまま時間が経って、“本当はこうしたい”という自分を見て見ぬフリしているうちに、モヤモヤや怒り、ストレスがたまってきて」

※続きは月刊Songs2016年6月号をご覧ください。

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