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新曲だけのオリジナル・アルバムとしては約2年振りとなる6作目。『Dr.Izzy』から聴こえてくるのは、これまで以上に肩の力の抜けたバンドサウンド、のびのびと勢いのある演奏、キャッチーを極めたメロディーと確信に満ちた歌。“何にもなろうとしていない”という地涌な境地を手に入れ、新たなステージへと飛び込んだ3人の心境とは?
Photo:橋本勝美 Text:宮本英夫

──最高のアルバムです。曲も粒揃いだし、生々しいバンドサウンドで全員のびのびと演奏している。最初のコンセプトはどんなものだったんですか?



田淵智也(以下、田淵)「僕の中で、4枚目(『CIDER ROAD』/2013年2月)と5枚目(『Catcher In The Spy』/2014年8月)がすごく良くできたアルバムだったので。同じようなことをやろうとしても、たぶん前の2枚は超えられないから、違う取り組み方でやろうと思ってました。今“良くできた”という言い方をしたけど、バンドが“良くできた”と思われると、今後長くやっていく時に、やりづらくなると思ったんですよ。だから今回は“良くできてないもの”を作ろうと……」

──それ、ちょっと語弊がある(笑)。でも言いたいことは分かります。



田淵「どう思われても正解になるようなものにしたかったんですよ。“やっぱり超えてきたな”と思う人も正解だし、“あれ、UNISON SQUARE GARDEN(以下、ユニゾン)ってこんなんだっけ?”というのも正解だし。色んな人の解釈が全部正解になるようなものを作りたいなと思ってましたね」

──それ、めっちゃ伝わります。

田淵「だから今回に関しては“コンセプトは”“聴きどころは”とかが全然なくて。聴いた人が“こう思ったんですけど、どうですかね?”と言うのに対して、“そうだと思います!”ということで、取材を全部乗り切ろうと思ってます(笑)」

──斎藤くんの、でき上がった手応えは?



斎藤宏介(以下、斎藤)「長い時間をかけて、断片的にレコーディングしてたんですよ。だから1枚のアルバムとしての実感はあまりなかったんですけど、マスタリングを終えて通して聴いた時に、1個1個のピースがはまって、今の自分達のスタンスにすごくしっくりくるアルバムだなと思いました。のびのび演奏してると言っていただきましたけど、そういうところでも、肩の力を抜いてできるようになってきた感じがあって。今まで構築、構築で培ってきたバンドの面白さとはベクトルの違った、新しいバンドの面白さの扉を開けたような気がします」

──貴雄くんは?



鈴木貴雄(以下、鈴木)「力の抜けたアルバムになったなと。全然無理がなく、何になろうともしていない。ポップにも、ロックにもなろうとしていないし、かといって悪いものを作ろうともしていない。自然な感じですね」

──アッパーな曲が多いから、ドラマー泣かせのアルバムかなと。

鈴木「いやいや、そんなことはないですよ。練習すれば誰だってできます」

──気になる曲の話をいくつか。『パンデミックサドンデス』と『オトノバ中間試験』は、この前のツアーでタイトルも言わずに新曲として演奏してました。これについては?

田淵「『パンデミックサドンデス』は、ドラマの主題歌(BSフジの海外ドラマ『ザ・ラストシップ』エンディング曲)を作るところから構想が始まったんですけど。ヘンに海外ドラマに合うような曲調ではなく、今のユニゾンとのバランスを考えて、“異常に速い曲”がいいなと。ドラマのさわりの部分を見た時に、パニックに陥った時の人間のもろさを描いていると思ったので、怒りの強い曲になったんですけど、バンドとして譲れない部分をキープした上で、タイアップ作品に失礼がないようなものを作ろうという、いいバランスでできたと思います」

鈴木「強い曲なので、初めてライブでやった時にも、ちゃんと反応がありましたね」

田淵「『オトノバ中間試験』は……『DUGOUT ACCIDENT』(2015年7月)という10周年記念アルバムは出たけど、ずっと新曲を出してなかったわけで。ちゃんと新曲を作ってるぞアピールをライブでしなきゃなと思った時に、まずこれを聴かせたいと思った曲です。作った経緯はよく覚えてないけど、いわゆるユニゾン節というか、サビで急にポップになるとか、それをもう一回狙ってやってみようと思って作った気がします」

斎藤「こんな曲を歌えるのはユニゾンしかいないだろうという、極みの曲ですね。そういう意味で、ライブでやる意味はすごくあると思います。まだ歌詞を見てない状態で曲を聴いたんですけど、読み解いていくと、ニヤリとしてしまうところがあったりして。昔の曲の歌詞と対になっていたりとか、歌詞と演奏がリンクしてたりとか、そういう仕掛けがたくさんあるので、ぜひ歌詞カードを見ながら聴いてほしい曲だなと思ってます」

※続きは月刊Songs2016年7月号をご覧ください。

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