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2014年から所属事務所であるオフィスオーガスタ主催のイベント「Augusta Camp」に出演し、耳の肥えたオーディエンスを魅了してきた松室政哉がいよいよメジャー・デビューを果たす。タイトルは『毎秒、君に恋してる』。表題曲は、アレンジャー河野 圭氏を迎えたサウンドがさらなる魅力を引き出した片思いのラブソング。これまでも本誌で取り上げてきたインディーズでの3作──『オレンジ』『ラブソング。』『Theme』を含む4曲入りのEPだ。
Photo:笹原良太 Text:山田邦子

──今回の作品でメジャー・デビューということになるんですね。



「はい、まだあまり実感は湧いてないですけど(笑)。でもいい曲を作ろうっていう気持ちはこれまでと変わらないし、これからも変わらないところだと思っていて。メジャー・デビューもそうですが、やっぱり新しい曲を出せるっていうことの喜びを感じています。リリースに先駆けて、今年の“Augusta Camp”でも歌わせていただきました」

──松室さんの楽曲は“映画のような”という表現で語られることも多いと思うのですが、今回はそのシーンの描き方がすごくCM的だなと思いました。2人の関係性や時間の経過が、限られた枠の中にギュッと凝縮されていて。



「なるほど。確かに、ストーリー的にはほんの数時間のことを描いてるんですよ。でもそこまでと、そこからも感じてもらえるような4分ちょっとになってるかなと思います」

──今回のジャケットも素晴らしいですね。

「どういうものにしようか色々探していた時に、イラストレーターの坂内(拓)さんに辿り着きまして。絵に“行間”があるんですよね。歌詞の内容も含ませて見ることができるし、絵だけ見てもここに思いを入れて見ることができる。CDのアートワークとしてもすごくいいなと思ったんです」

──曲の世界観もすごく伝わってくるけど、『毎秒、君に恋してる』というタイトルの文庫本の表紙のような雰囲気もありますよね。小説の始まりはもちろん、歌詞と同じく“はじまりは最後の恋の歌 100年先も”。

「確かにありそうですね(笑)。ちなみにこの歌い出しの部分、どう捉えました?」

──メジャー・デビューというこの“はじまり”のタイミングで、これ以上ないほど純粋で熱烈な恋の歌を歌う。そしてこの歌が100年先も愛されていきますように。ちょっと仕事っぽいですけど、そんなふうに考えました(笑)。

「いやもう、そうなんですよ(笑)。これが最後の恋の歌だなんて言っちゃうような男の歌ですけど、恋してる時ってみんなそうで、そういうことを思ってしまうんですよね。そういう意味もあるし、今言ってもらったように、デビュー曲でいきなり“最後の恋の歌”って言ってしまう面白さとか潔さもあるんです。ありがとうございます(笑)」

──しかし今回の主人公は、ものすごくピュアな片思いをしているんですね。片思いの曲って、これまであまりなかった気がするんですが。

「うちの母親が、片思いの曲を作れ作れって(笑)。10年ぐらい、ずーっと言われ続けてたんですよ。“この世のほとんどの人が今、片思いしてるから”って(笑)。だからというわけではないんですが、でき上がってから、そういえばそんなこと言ってたなと思って」

──(笑)。片思いって、曲の題材にはしやすいものですか?

「どうなんですかね。僕があまり作ってこなかったのは、片思いのシチュエーションって、その人には他に好きな人がいるとか、恋人がいるとかになりがちじゃないですか。それももちろんいいんだけど、同じように作っても意味がないなと思ってたんですよ。だからもうちょっと手前の段階で色々考えてるというか、“好きだけど伝えられない”じゃなく、“伝えようとしている直前”を書いてみるのはどうかなと思ったんです」


※続きは月刊Songs2017年11月号をご覧ください。

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