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芥川賞作家の中村文則原作のサスペンス小説『悪と仮面のルール』が映画化。悪の心“邪”を持つ家系に生まれた主人公の久喜文宏を演じるのは、朝の連続テレビ小説「あさが来た」で国民的な人気を集めた玉木 宏。これまでの精悍なイメージとは異なる新たな一面を見せた今作の魅力や役について、さらには音楽についても語ってくれた。
Photo:松井伴実 Text:奥村百恵

──今作のどんなところに魅力を感じてオファーを受けられたのでしょうか?



「まず原作を読ませていただいて、とても面白いと感じました。文学的なこの作品をどのように映像化するんだろうと興味を惹かれたのと、幼少期も描かれているので、幼少の頃の気持ちを引き継いで演じなければならない難しさが、ある意味挑戦になるだろうと思いました。誰もが“正義とはなにか”“悪とはなにか”ということを考えたことがあると思いますし、悪人でさえもその人なりの正義があるのではないかと。そういったことを観客に投げかけるようなテーマ性のある今作に魅力を感じました」



──悪の心“邪”を持つ家系に生まれた文宏は複雑な内面を抱えた難しい役だったと思いますが、どんな部分を大事に演じましたか?

「文宏は狂気的ではなく、淡々と目的に向かっていくような人です。それに頭の切れる人間でもある。ある種そういった怖さだったり、冷静に行動を起こしていく内面を表現することのほうが大事だと思ったので、そこを意識して演じました」

──そんな文宏を玉木さんは魅力的に演じてらっしゃいました。



「邪として育てられてはいますが、彼の根本にあるのは純粋でピュアな気持ちなんです。新木優子さん演じる香織という存在がいたから文宏は生きてこられたのだと思いますし、最後までその思いは変わらない。香織がいたからこそ善悪の間で葛藤するので、そこが魅力的に映っていたなら嬉しいです。そうでなければただの狂気的な男になってしまいますから」

──文宏はあまり感情を表に出しませんが、だからこそタバコを吸う仕草などちょっとしたシーンが印象に残りました。

「基本的には感情や心情が表に出ないよう抑えた芝居をしていましたが、唯一文宏の心の弱さを表現できたのがタバコを吸うシーンだったと思います。乗り越えなければいけない困難に立ち向かう前に、タバコを一服して気持ちを落ち着かせていたのではないかと。今の世の中タバコを吸うシーンは嫌われる傾向にありますが、この作品にとっては必要なアイテムなんだと、そんなふうに思いながら演じていました」

──柄本 明さんや光石 研さん、中村達也さんや吉沢 亮さんなど、個性的な共演者達との現場はいかがでしたか?

「皆さん素敵でしたが、中でも柄本さんはお芝居が上手な方だなと改めて思いました。一緒にお芝居していると、柄本さんの中の何か内に秘めたものを感じられるというか。そういうことは出そうと思って出せるものでもないので、きっと色々な積み重ねと経験があったからこそああいう佇まいでいられるんだなと実感しました」

──全編ロケ撮影だったそうですね?

「通常なら部屋の中の撮影はスタジオのセットを使ったりするのですが、今作は外も中のシーンも全てロケでした。ロケーションのパワーをすごく感じましたし、アジトに関しても丁寧にひとつひとつ細部にまでこだわって作り込まれた空間だったので、気持ちも作りやすかったです。吉沢くんもアジトのセットを見て感動していました」

──今作の世界観を見事に作り上げた中村哲平監督は、小説のセリフも大事にされたそうですね。玉木さんの中で印象に残ったセリフはありますか?

「特にこのセリフがといったことではないのですが、口語調ではないセリフも多用されていたので、感情を乗せるのがすごく難しかったのを覚えています。ただ、それこそが中村文則さんの原作の魅力でもありますし、その原作の良さを活かした脚本になっていると思います」


※続きは月刊Songs2018年2月号をご覧ください。

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