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前作「V(ビバ)』から約2年振りとなる大原櫻子の3rdアルバム『Enjoy』が完成した。秦 基博が手掛けた『マイ フェイバリット ジュエル』や、いきものがかりの水野良樹による『さよなら』など話題のシングル4曲を含む本作。映画や舞台を経験しながら高めてきた“表現者”としての力が、音楽の面でも存分に発揮された充実作だ。
Photo:竹中圭樹(D-CORD) Text:山田邦子

──アルバムとしては2年振りになるわけですが、次はこういう内容がいいななど、何かイメージはあったんですか?



「あまり前々から考えていても、いざリリース時期になって“あれ!? これは今の私じゃないな”ってなっても困るから、特に考えたりはしませんでした。今回も、制作を始めたのは(今年の)春くらいだったかな?」

──どんなふうに作り始めたのか、聞かせてもらえますか?

まずこのタイトルなんですけど、今年に入って舞台をやっていたんですね。実は今回のアルバム・タイトル『Enjoy』は、そこからヒントを得ていて」

──舞台というのは、2月から上演されていた『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』ですね。



「はい。本番が始まる前にみんなで円陣を組んで、“今日の公演、Enjoy! Enjoy!”ってずっと言っていたんです。公演が終わって(共演者の)みんなと会わなくなってからも、私、友達とか家族とかに対して“Enjoy”って言葉を結構言っていたらしく、それを姉から指摘されたんです。その時に、“Enjoy”はきっと私の今年のテーマなんだなって思ったんですよ。あとは、ダンス。今回は踊れる曲をたくさん入れたいなと思っていたので、そういうEnjoy感みたいなものも伝わるかなと思って、このタイトルにしました」

──舞台のお仕事と音楽活動が、大原櫻子の表現としてちゃんとリンクしてるんですね。

「本当にそうなんです。芝居のことが歌に生かされ、歌が芝居に生かされるってかけがえのない幸せというか。すごく嬉しいんです。2つやっている意味が増すというか、やってきて良かったなぁって思うんですよね」

──以前、芝居の中で歌う歌と音楽活動の中での歌は、体の使い方も発声も全然違うということをおっしゃってましたが、最近は何か発見がありました?

「ありました、ありました。今年やった『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』という作品は演出が小川絵梨子さんで、ずっとストレート・プレイ(※歌唱を含まない演劇)をやってこられた方なんですね。ミュージカルは今回が初めて。その小川さんの演出は、ミュージカルなんだけど、いわゆるミュージカルの歌い方をあまりやらない感じだったんです。芝居の流れでただ歌を歌っているというか、極端に言うともうしゃべっちゃってもいいし、気持ちが先行するんだったら歌わなくてもいいしというやり方だったんです。だから、ミュージカルでもないし、J-POPでもない感覚というのをひとつまた経験しましたね」


──表現の幅がまたひとつ広がったわけですね! その経験を踏まえて行なわれた今回のレコーディングはどうでした?

「感情の表し方とか、声の表情を思い切って変えていけたと思います。これまでの“大原櫻子のカラー”──上手く言えないけど、自分の中には何となくあったものはなくして、超ロックな曲はガッツリ言葉を言い放ったり、今まで出したことのなかったような声色を出してみたり。…そう、ひとつひとつの表情をガラッと変えるというのは、お芝居にも通じるところだったと思います」

──それだけ振り切った個性を持った楽曲が顔を揃えていますよね。

「はい。シングルとして歌ってきたものはバラードとかミディアムとか、どちらかというと大人っぽくて落ち着いたものが多かったと思うんですね。なので、アルバム曲としてはアップテンポなものを多めにしたいなというのはありました。今、次のツアーの演出なども考えているんですが、これまでで一番ポップになりそうなんですよね。(アルバム・タイトルが)『Enjoy』だから、遊び心もたくさん取り入れていきたいなと思っているところです」


※続きは月刊Songs2018年7月号をご覧ください。

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