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山中さわお
来年(2019年)9月16日に結成30周年を迎えるthe pillows(以下、ピロウズ)。30th Anniversary “Thank you, my highlight”の第1弾となる22枚目のオリジナル・アルバム『REBROADCAST』は、(“再放送”を意味するタイトル通り)これまでのバンドの歩みを想起させつつ、現在進行形のオルタナティブ・ロックを真っ直ぐに描き出した作品となった。“今は自分の人生に納得している”という山中さわおに本作について聞いた。
Photo:竹中圭樹(D-CORD) Text:森 朋之

──ニュー・アルバム『REBROADCAST』は、ピロウズ流のオルタナティブ・ロックがたっぷり堪能できる作品。この方向性は、制作がスタートした時点で決まっていたんですか?



「どうだったかな? オルタナティブ・ロックをピロウズでやると俺のソロ作品みたいになっちゃうから、あえてロックンロール寄りにしていた時期もあったんだよね。でも、そうしたところで自分のソロみたいになるのは変わりなくて。僕はバンドのソングライターであり、全体をコントロールするプロデューサーの立場でもあって、そうなってから長いから、そのことを気にするのはやめようと思ったんだ。だから今回のアルバムも、あえてオルタナをやろうと意識していたわけではなく、新曲を作って、気に入ったものをレコーディングしただけというか。ただ、その前に“フリクリ”(ピロウズがサウンドトラックを手掛ける劇場版アニメ作品『フリクリ オルタナ/プログレ』)の音楽を作ったから、そっちに引っ張られたところはあるかも」

──『フリクリ』の音楽は基本的にオルタナ寄りですからね。

「うん。その時に久し振りに『Ride on shooting star』(2000年リリース/OVA『フリクリ』エンディングテーマ)をCDで聴いて、“こういう音で録ってたのか”と思って。その流れで2000年、2001年あたりのピロウズの作品を聴いてみたら、想像以上に良い部分と、記憶よりも良くないところがあったんだよね。そうやって振り返る作業が楽しかったのも、このアルバムに繋がっているのかもしれないね」

──90年代のオルタナ・ミュージックに対する思いは今も変わっていないですか?

「あまり変わってないね。僕は90年代のアメリカのオルタナが好きで、その中のごく一部のバンド──ニルヴァーナとかスマッシング・パンプキンズとか──はトップカルチャーのバンドになったけど、一番好きなピクシーズやブリーダーズ、ペイヴメントは全くそうではなくて。あまり知られてないからこそ、懐かしさはあっても古くはなってないんだよね。ピクシーズやブリーダーズはコアな音楽ファンは知ってるけど、そうじゃない人達は知らないんじゃないかな(笑)」



──確かに(笑)。

「それに僕らは昔と同じことをやっているわけではないから。ずっと曲は作り続けているし、その中で僕の心のオーディションで勝ち残ったものを収録して、それがアルバムになっていくからね。その中で5番目くらいに『Rebroadcast』という曲ができて、“これをアルバムの1曲目にしよう”と思って。僕らの場合、アルバムの1曲目は(アルバム・ツアーの)1曲目になるので、“これをライブの1曲目にやりたい”というほうが先だったんだけどね。ライブの最初からハイテンションに盛り上がりたいという気持ちがまずあって、だから『Rebroadcast』をアルバム1曲目にしたっていう」

──さらにアルバムのタイトルも『REBROADCAST』になったと。

「うん。たまたま“再放送(Rebroadcast)”という歌詞が乗ったんだけど、30周年を迎えるタイミングでリリースするアルバムに“再放送”というキーワードがあるのはいいなと思ったし、以前のアルバムで使った手法や歌詞で遊べるなと気付いたんだよね。最後の『Before going to bed』には“人生は一度きりだ”(『Life is only once』)というワードがあって、実はドキュメンタリーになっているという全体像が決まってからは早かったかな」


※続きは月刊Songs2018年11月号をご覧ください。

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